日東紡はAI用ガラス繊維市場でTガラスで世界の9割のシェアを持つが、最近増産を中止すると発表した。
「AI向けの巨大なチップ基板で、Tガラスが代替の利かない理由は物性にある。シリコンの熱膨張係数は約2.6ppm/°Cと小さく、樹脂を主体とする有機コア基板は約7ppm/°Cと大きい。この差が、加熱と冷却を繰り返す実装工程で反りを生む。チップが大型化し発熱が増すほど、わずかな膨張差が積層全体のひずみに拡大する。Tガラスはガラス転移点を超える領域でも高い弾性率と低い膨張を保ち、はんだ付けのリフロー時の反りを抑える芯材として働く。誘電率を下げた低誘電グラスは、高速伝送時の信号の遅れと損失を減らす役割を担い、日東紡はこの分野でも8割超を占める。材料の世代差も明確だ。Tガラスは汎用のEガラスから派生した特殊品で、Eガラスが汎用基板を担うのに対し、Tガラスはエヌビディアの加速器のような最先端基板のコアに限って使われる。日東紡が2028年の投入を計画する次世代Tガラスは、現行の熱膨張係数2.8ppm/°Cを約30%下げて2.0ppm/°Cに近づけるとされる。これはシリコンの2.6ppm/°Cを下回り、基板側がチップよりわずかに縮む設計余地を生む。膨張差を限界まで詰める競争が、より大きく高層化する次世代パッケージの歩留まりを左右するため、0.8ppmの改善が量産可否を分ける重みを持つ」
寡占に挑む動きも始まっている。旭化成は2026年4月、ガラス繊維とは別系統の石英クロス(シリカ含有率99.9%の織物)でAI基板材料に参入し、世界シェア約9割の日東紡に正面から挑むと表明した。石英は超低膨張と低誘電を両立しやすい一方、加工難度と価格が高い。日東紡、旭化成、AGC(旧旭硝子)の3社でガラス繊維市場の7割超を握り、高度なガラスクロスの大半を供給する。台湾ガラスや南亜、日本電気硝子(NEG)も能力を広げるが、最先端の低CTE品で量産実績を持つ担い手は限られる。旭化成の石英が量産価格まで降りてくるか、日東紡の次世代Tガラスが2.0ppm/°Cを安定供給できるか——この二つの達成時期の前後が、2028年前後の主導権を決めるとみられる。技術の優劣だけでなく、誰が先に歩留まりと量を揃えるかが勝敗を分ける局面に入った。
実は中国でもかなりの規模でガラス繊維の新規増産が始まっている。天然石英砂を電気溶融し、それを繊維にするのだ。ただそれをシートにする設備はまだ設置の気配はない。これは設備投資額が大きいためと言われているが、どうなのだろう。私は合成シリカ粉を電気溶融し、それを線引きして合成シリカファイバーを作ることにしている。電気溶融はうまくいっている。今後の進展に期待である。
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