マスク帝国

AP通信は12日、米ナスダック市場への宇宙開発企業スペースXの上場に伴い、同社を率いる大株主のイーロン・マスク氏の資産が1兆ドル(約160兆円)を超え、世界初の「兆万長者」が誕生したと伝えた。日本の2026年度当初予算の歳出総額122兆円強を上回り、マスク氏の出身国南アフリカの国内総生産(GDP)の約2倍に当たる。

エリック・ジョーゲンソンの著書「The Book of Elon」を読んでみると並外れた執念を感じる。SpaceXが開発した初の軌道打ち上げ用ロケット「Falcon 1」は、2006年の初打ち上げから2008年8月にかけて3回連続で失敗した。当時のSpaceXは資金が枯渇し、4回目の打ち上げに失敗すれば倒産が避けられない状況に陥っている。すでに1億ドル以上の私財をつぎ込んでいたイーロンは、残された資金のすべてを賭けて2008年9月に4回目の打ち上げを実行する。この挑戦は見事に軌道到達を果たし、民間企業として世界初となる液体燃料ロケットの打ち上げ成功という歴史的な快挙を成し遂げた。この成功の直後、SpaceXはNASAから16億ドル規模の商業補給サービス契約を獲得し、破綻の危機を脱している。極限の重圧のなかで全財産を投じる姿勢は、普通の人にはできない。

比較することはできないが、日本の経営者、特にサラリーマン社長は「賭け」には出ない。オーナー企業の社長ですらできないだろうが、マスクはいとも簡単に全財産を使って「賭け」に出る。いやマスクにとっては「賭け」ではなく「運命」なのだ。そしてそんな彼に神は「試練」を与え、最後に「成功」を与える。

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