がん治療薬開発を手掛ける米レボリューション・メディシンズは、進行性膵臓がん患者の生存期間を伸ばす画期的な内服薬について、米食品医薬品局(FDA)の承認を獲得した。治療が難しいがんに対する大きな前進となる。 生存期間ほぼ2倍-治療に大きな前進 腫瘍の増殖に関わるたんぱく質RASを幅広く標的とする薬の先駆けの一つだ。膵臓がんの大半で、このRASに変異がみられる。 商品名は「Rasonque」とし、26日から提供を始めた。1日1回服用するRasonqueの定価は年間47万5000ドル(約7600万円)を超え、がん治療薬として過去最高水準の価格となる。 膵臓がんは、転移した後に診断されることが多く、患者の余命が数カ月にとどまるケースが少なくない。だが臨床試験では、レボリューション・メディシンズの薬を投与された悪性度の高い膵臓がん患者の生存期間が、標準治療を受けた患者のほぼ2倍となった。5月に発表された後期臨床試験では、化学療法を受けた患者の生存期間が6.7カ月だったのに対し、Rasonqueを投与された患者では13カ月を超えた。 Rasonqueは、すでに化学療法を受けた転移性膵臓がん患者、または複数の薬を組み合わせた治療が適さない患者を対象に承認された。F膵臓がんは死亡率が高く、5年生存率は13%にとどまる。米国がん協会(ACS)によると、今年は6万7000人超が膵臓がんと診断され、5万2000人超が死亡すると推計されている。重要なのは、Rasonqueは自宅で服用できるため、治癒が見込めない患者が、がんセンターで点滴治療を受ける代わりに、家族と過ごす時間を増やせる可能性があることだ。レボリューション・メディシンズは、より早期の膵臓がんへの適応拡大に向けた臨床試験も進めているほか、肺がんでの有効性も検証している。研究者らは長年にわたり、RASに効く薬の開発に苦戦してきた。レボリューション・メディシンズは、危険なたんぱく質を事実上封じ込める革新的な「分子糊」の手法を考案した。
RAS(ラス)は、細胞が「増えろ」という指令を伝えるスイッチのようなタンパク質だ。RAS遺伝子に変異が起きると、このスイッチがONのまま固定されてしまい、細胞が増え続ける。1980年代にRASががんの原因と特定されてから40年、RASは「undruggable(薬で狙えない)標的」と呼ばれ続けている。理由は形だ。RASの表面はつるりとしていて、薬が引っかかる深いくぼみがない。Rasonqueは、細胞の中にあるシクロフィリンAというタンパク質と先に手を結び、その複合体でRASのONの状態をはさみこんで働けなくする――「三者複合体(tri-complex)」という仕組みだ。
RAS阻害剤は、血圧の薬に代表される古い薬である。しかしそれをガンに応用することは長く地道な道であった。日本も治験に参加しているので、日本での認可もそう遠くないだろうが、高額な薬代はますます社会保障を痛めつける。生存期間が倍になろうが、そこに社会的な意味があるのだろうかと考えると複雑な気持ちになる。
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