10月23日に行われた第13期全国人民代表大会(全人代)第31回会議で、国務院(内閣に相当)による「不動産税」(固定資産税)導入を、一部地域における改革パイロットテストケースとして実施することを決定した。

 個人所有の不動産保有に対する税金というのは、これまで原則としてなかった。2011年に上海市と重慶市で導入されたが、あくまでテストケースである。しかも、上海と重慶の不動産保有税というのは、いわゆる投機目的不動産、豪邸が対象だった。たとえば上海では、自宅使用目的外に新たに購入した不動産が対象で、1人あたり面積60平米以上の不動産に対する課税だった。税率も取引価格の7割に対する0.4~0.6%という低いものだ。重慶では、別荘など100平方メートル以上の新規購入高級住宅について、取引価格の7~9割に対して最大1.2%の税金がかかる。こうした不動産保有税、つまり固定資産税の上海市や重慶市への税収への寄与は3%あるかないか程度で、住宅価格への影響もなかった。だが、今回導入される固定資産税パイロットテストは、より広範囲に影響力のあるものではないか、と見られている。

 今回の全人代常務委員会会議で、不動産税テストケースの導入と改革の方針として主に以下の3つのことが決定された。

(1)テスト地域の不動産税徴収対象は都市部の居住用と非居住用の不動産で、農村宅地およびその上に建てられた住宅は含まない。納税者は土地使用権人、不動産所有権人とする。非居住用の不動産に関しては、現行の不動産税暫定条例、都市部土地使用税暫定条例に基づいて執行される。

(2)国務院が不動産税テストケースの具体的方法を制定し、テスト地域の人民政府が具体的な実施細則を制定する。国務院およびその関連部門、テスト地域政府が科学的で実行可能な徴税管理モデルとプロセスを構築する。

(3)国務院が、不動産市場の健康的で安定した発展を促進するためにテスト地域を制定し、全人代常務委員会に準備案を報告する。

 またテスト期限は、国務院がテストスキームを発表してから数えて5年とした。テストのプロセスにおいて、国務院は適時にテストの結果を総括し、6カ月以内に、全人代常務委員会にテスト地域の状況を報告する。テスト地域が引き続きテストを続行したい場合は、関連する意見を提出して全人代常務委員会の決定を仰ぐことができる。条件が成熟すれば、適時に法律を制定する、とした。

 人によっては、これをかつて毛沢東が実施した「土地改革」(地主から土地資産を取り上げ農民に再分配した改革)や、1998年の朱鎔基改革に匹敵するインパクトを与えるのではないか、と見ている。朱鎔基改革では、国有企業が分配貸出していた不動産を個人に払い下げることになった。ちなみに朱鎔基改革によって、一部都市民は不動産資産というもの初めて持つようになり、民営の不動産市場が形成された。その後の高度成長によって不動産が高騰すると一部都市民が大規模資産を獲得することになった。不動産保有税と相続税がなかったがために、一部都市民は不動産を利用してキャピタルゲインを増やしていき、都市に中間層、そして富裕層が形成された。農村戸籍者にはそういった国有企業改革の恩恵は一切なく、出稼ぎ労働者として安価な労働力を搾取されるだけだった。この結果、ジニ指数的には革命が起きても不思議ではないほどの貧富の格差が生まれたのだ。

 SNSでは、手持ちの不動産を慌てて売ろうとして、その価格の下がり具合に慌てふためき嘆く都市の不動産オーナーの声があふれている。たとえばこんな具合だ。

「広東省恵州の碧桂園十里銀灘の337平方メートルの最上階部屋、17年前に購入したときは、330万元だったのが、今売ろうとしたら240万元!(窓から)海を眺めていると、涙で目がかすんで、もう海水なのか涙なのかわからないよ」

「2017年に105万元で買ったとき、仲介業者は5年もたてば200万元以上に絶対値上がりすると話していた。・・・4年たって、今売ろうとしたら、80万元にしかならない。4年で25万元損をしたことになり、大ショック。でも売らないわけにはいかない。住むのも不便だし。1階のテナントもコンビニが1件と不動産仲介業者が入居しているだけで、ほとんど空き状態だ。食事する店すらない」

 中国基金報によれば、老舗不動産仲介会社「中原不動産」は、「市場低迷が続くなか、核心資産を保留したままこの寒い冬の時期を乗り切るために業務規模を調整し、すべての店舗で経営状況に合わせて事業を縮小し、第4四半期の収支バランスを達成させる」という決定を内部リポートで通達したという。ロイターは、中原不動産のアナリストのコメントを引用する形で、「郊外の荒廃した不動産は売り出される。・・・迅速な市場救済がなければ、平均価格は少なくとも15~20%下落するだろう。三、四線都市では挫折する開発プロジェクトが出てくるだろう」との予測を紹介している。

 一、二、三線都市での中古不動産市場での9月の不動産平均価格は、前月比で0.4%減,0.1%減,0.2%減。北京の9月の中国不動産取引量は前月比21%減、上海の9月の取引量は前月比40%減と大幅に減っている。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたところでは、当初テストケースは30都市で実施する計画だったが、なんのかんの言っているうちに10都市程度に削減されたという。2011年に重慶や上海で導入されたテストケースと同様、実際は抵抗勢力、つまり不動産を資産として多く保有する共産党中央の官僚たちやそのファミリーの抵抗にあって、掛け声ほどには大胆な税制改革につながらない可能性もあるだろう。 なにせ都市民世帯の平均的な資産比重で言えば、7割が不動産。下手に広く不動産税を徴収すると、都市民全体が政権への恨みを募らせる。1件目の不動産に対する課税を免除したり、課税免除面積をそれなりに広く取るなどの免税措置がとられる可能性はある。

 私の中国人の知り合いはアパートを3軒持っている。しかし多額のお金を借りている。日本のバブル崩壊と同じで貧乏になるかもしれない。しかし、これは投資であり、投資にはリスクがつきものだ。お役人はアパートの建設に口利きすると二、三軒のアパートをもらうのが通例だ。そういった人も大変になる。習近平は多くの人を敵にしてまでこの政策をやるのだろうか? そういえば、私のアパートは地方都市にあるが、田舎から出てきた人は田舎の戸籍のままにしたいという。その方が恩恵があるからだ。田舎で習近平は人気がある。中国は今急旋回をして時代をさかのぼっている。

コメントを残す